柳沢正史教授監修・自宅で取り組める睡眠改善サービス「SOMNO+」はこちら睡眠負債のチェックシート日ごろのちょっとした睡眠不足でも、長期間続くと心身に影響を及ぼします。以下の症状に当てはまる場合は「睡眠負債」を抱えているかもしれません。ぜひ、チェックしてみてください。寝起きが悪い午前中でも頭が働かない日中に眠気がある体がだるい仕事や作業がはかどらないイライラしやすい気分が乗らない、やる気が出ない体調を崩しやすい睡眠負債とは?睡眠負債とは、日常的な睡眠不足がだんだん蓄積されて、心身に支障を来している状態のことです。たとえば、本来必要としている睡眠時間より1時間短い睡眠を続けると、1ヶ月で30時間の睡眠負債を抱えていることになります。徹夜やごく短時間の睡眠による睡眠不足ではなく、少しの睡眠不足が蓄積していくことで、自分が睡眠負債を抱えていることに気づかないケースが多いのです。日本人が睡眠負債を抱えやすい原因日本では、仕事と家庭を両立するためにするべきことが多いことや、長時間の通勤による影響が、睡眠時間の不足しやすい原因に。スマートフォンやパソコンが普及し、ゲームや動画配信を楽しむ夜型生活になったことも一因とされています。また、日本人は世界的にみても、平均睡眠時間が短い傾向があるのです。経済協力開発機構(OECD)が2021年に行った調査において、加盟国33ヶ国の平均睡眠時間と比べ、日本は1時間以上短いことが分かりました。令和4年国民健康・栄養調査で、睡眠が6時間未満の人の割合は、男性37.0%、女性39.9%と、男女とも4割に近いと報告されています。寝だめで睡眠負債は取り戻せない日ごろの睡眠不足を、休日にたっぷり寝て取り戻そうと考える人がいるでしょう。しかし「寝だめ」は、睡眠負債の解消にはなりません。休日と仕事がある日の、就寝時間や起床時間を変えてしまうと、体内時計が乱れてしまい、海外旅行をしたときのような「時差ボケ」が起きてしまうのです。体内時計が乱れることで、かえって日中の眠気や体のだるさが生じやすくなり、仕事の能率も低下するといわれています。休日と仕事がある日の睡眠時間は、2時間以上ずらさないようにしましょう。睡眠負債がたまると現れる症状通常、日中に脳や体が受けたダメージは、睡眠によって回復します。しかし、睡眠負債では、ダメージを修復しきれず、疲労が残ったままになるため、さまざまな症状が現れるのです。睡眠負債で問題となる5つの症状について確認しましょう。肥満睡眠負債があると、肥満になりやすいことが分かっています。海外の研究で、睡眠不足が続くと、食事の摂取カロリーが増えて、お腹周りの脂肪が9%増加すると報告されました。睡眠不足が続くと、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減る一方で、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が増えるため、過食になることが多いといわれています。認知力・判断力の低下睡眠負債は、認知機能にも影響を及ぼします。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、レム睡眠には記憶や感情を整理する働きがあります。睡眠負債になると、睡眠時間が不足することで、レム睡眠も短縮。レム睡眠が短くなると、記憶や感情の整理が追いつかなくなり、認知力や判断力が低下します。また、睡眠負債になると、脳の休息が足りず、機能の回復が不十分に。そのため、日中にケアレスミスが増えたり、仕事の能率が低下したりすることが分かっており、労働生産性の低下につながるのです。免疫機能の低下免疫機能と睡眠には深い関連があります。睡眠不足が続くと、免疫細胞の働きを高める「成長ホルモン」の分泌が低下することが分かっています。1週間ほどの睡眠負債でも、鼻かぜの発症率が4倍に増加したという海外の調査報告も。睡眠時間の不足だけではなく、睡眠の質も悪いと発症率はさらに増加したと報告されています。関連記事:睡眠と免疫力の関係性メンタルの不調睡眠負債は、メンタルの不調も起こしやすくなります。睡眠不足が続くことで、情緒不安定・イライラ感・抑うつ症状が生じやすいといわれています。海外の研究調査で、睡眠負債があると、うつ病の発症リスクが2.3倍まで上昇するという報告がありました。また、令和5年版過労死等防止対策白書のなかで、睡眠時間が理想よりも短くなるにつれて、うつ傾向や不安を訴える割合が多くなることが示されています。生活習慣病のリスク上昇睡眠負債がある人は、高血圧や糖尿病の発症リスクが高まることが分かっています。睡眠不足が続くと、食欲が過剰に増進することによって、メタボリックシンドロームを引き起こすことが一因に。メタボリックシンドロームは、将来的に心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる重大な病気のリスク上昇につながるため、注意が必要です。睡眠負債を解消する5つの方法睡眠負債を解消するには、十分な睡眠時間をとったり、睡眠の質を高めたりして、きちんと眠ることが大切です。解消に向けた対策を5つ紹介しますので、取り組みやすいものから始めてみましょう。睡眠日誌をつける睡眠日誌をつけると、現在の睡眠状況を把握できるため、健康的な睡眠がとれているかどうか判断することが可能です。睡眠日誌には、就寝と起床の時間・途中で目が覚めたなどの睡眠状況・日中の眠気や体調などを記載します。睡眠日誌は、インターネットでダウンロードできます。自分自身では継続して取り組むことが難しい場合や、会社の周りの従業員と一緒に取り組むことで睡眠負債の解消を目指したいときは、専門家によるサービスを利用するのも良いでしょう。NTT PARAVITAが提供する「ねむりの応援団」は、従業員の睡眠改善をサポートするサービスです。セルフチェックのほかに、自分ひとりでなかなか改善できない睡眠の悩みについて、ねむりのパーソナルトレーナーによる伴走サポートがあります。参考資料:すぐにわかる「ねむりの応援団」3点セット適切な睡眠時間を確保する睡眠負債を解消するには、適切な睡眠時間を確保しましょう。日中に眠気が起こらず、仕事に影響が出ないときの睡眠時間が、適正の目安となります。現在の睡眠時間で、日中に眠気が生じるようであれば、いつもより30分ほど早く就寝して様子を見ましょう。1週間ほど続けて、日中の眠気やだるさがないか確かめると良いです。日中の眠気が残る場合は、さらに30分早く就寝するといった具合に、自分にとって適切な睡眠時間が分かるまでくり返します。個人差はありますが、成人の睡眠時間は、7時間~9時間と推奨されています。睡眠環境を整える睡眠環境を整えて、質の高い睡眠をとることも睡眠負債の解消につながります。睡眠時間を十分確保していても、寝苦しくて途中で目が覚めるなど、睡眠の質が低下すると、結果的に睡眠不足となります。睡眠環境は以下の3つに気を配ると良いでしょう。吸湿性・保温性に優れた寝具を使用するエアコンを活用し、寝室の気温・湿度を調整する寝室の照明や音に注意する体内時計を調整する睡眠負債を解消するために、体内時計が乱れないように調整しましょう。起床してから午前中にかけて日光をしっかり浴びると、体内時計がリセットされ、睡眠をコントロールするホルモンの分泌リズムが整うようになります。食事の時間も体内時計をコントロールするのに重要です。朝食は起床から2時間以内に摂ることで、体温を上げて、体が活動的になるのを助けます。夕食は就寝時間の近くに摂ると、寝ている間も食べ物の消化が続くため、睡眠の質が下がることが分かっています。1日3食、できるだけ一定の時間に摂るようにしましょう。短時間の昼寝を活用する仕事の都合で、夜間の睡眠時間がとれなかったときは、昼寝を活用しましょう。昼寝は、15分~20分程度にとどめ、眠気の起こりやすい12時~15時の間にとるのがベストです。昼寝の時間が長すぎると、夜の寝つきが悪くなるため注意してください。短時間の昼寝には、不足した睡眠を補うほかに、疲労回復や集中力を向上させる効果があるといわれ、仕事の能率がアップするでしょう。睡眠負債はためないことが大切。たびたびチェックして早めに解消しよう睡眠負債は、慢性的に睡眠不足が続くことによって、認知力・判断力の低下やメンタルの不調などを招きます。それなりの睡眠時間を確保しているつもりでも、睡眠不足が知らずしらずのうちに蓄積されていくのが睡眠負債の怖いところです。睡眠チェックシートや睡眠改善サービスを活用し、睡眠負債になっていないか、こまめに確認することをおすすめします。睡眠負債があるときは、紹介した改善方法を試し、早めに解消しましょう。