柳沢正史教授監修・自宅で取り組める睡眠改善サービス「SOMNO+」はこちら体内におけるマグネシウムの役割まずは、体内におけるマグネシウムの役割を確認していきましょう。マグネシウムは、カルシウムやリンとともに骨や歯を形成していて、体内では約6割が骨や歯に存在しています。残りは筋肉や脳・神経に存在し、以下のような役割を担っています。酵素の活性化筋肉の弛緩・緊張神経情報の伝達体温・血圧の調整睡眠の質の向上参照:「マグネシウム」厚生省e-ヘルスネット睡眠の質を上げるマグネシウムの効果体内で複数の役割をもつマグネシウムについて、睡眠の質を上げる役割に注目し、効果が得られる理由を3つ紹介します。リラックス物質「BAGA」生成をサポート睡眠ホルモン「メラトニン」生成をサポート筋肉のコリを軽減1つずつ確認していきます。リラックス物質「GABA」生成をサポートGABA(ギャバ)は、ストレスの軽減や血圧低下の効果が知られている神経伝達物質です。GABAを摂ることで副交感神経が優位になり、リラックスできると言われています。副交感神経は自律神経の1つです。もう1つの自律神経である交感神経より働きが高まっていると、心身がリラックスして体が休まります。GABAには、交感神経をしずめて副交感神経を優位にする働きがあるため、緊張がやわらぎ、興奮がおさまるというわけです。マグネシウムを摂取することによりGABAの生成と働きがサポートされ、眠りにつきやすくなるでしょう。関連記事:GABA(γ-アミノ酪酸)が豊富な食材睡眠ホルモン「メラトニン」生成をサポート良質の睡眠には睡眠ホルモンと言われる「メラトニン」が欠かせません。メラトニンには睡眠と覚醒のリズムを調整する働きがあり、メラトニンが分泌されると眠気を感じられるようになります。マグネシウムは、メラトニンが作られる過程で必要になる栄養素です。メラトニンはセロトニンから、セロトニンは食べ物から摂取する「トリプトファン」から作られます。トリプトファンからセロトニンが作られる過程で必要になるのがマグネシウムです。メラトニン不足にならないよう、十分なマグネシウムを摂取しましょう。筋肉のコリを軽減マグネシウムは、筋肉をゆるめることにくわえ、神経情報の伝達に関わり、体のコリを減らす働きがあります。コリは睡眠の妨げになります。コリがあると血流が悪くなるためです。よく眠るには、血流を良くして副交感神経を優位にする必要があります。プライベートや仕事でパソコンやスマートフォンを使っている方は、画面を見るのに長時間うつむいた姿勢になりがちで、筋肉がかたくなり、コリが生じやすくなります。マグネシウムを摂取することで、少しでも体のコリを減らせれば、良質な睡眠を得られます。現代人がマグネシウム不足である理由マグネシウムは、体内で作られることはないので、体外から摂取しなければなりません。厚生労働省によると、マグネシウムの1日の食事摂取基準量は以下のように定められています。18~29歳:男性340mg、女性270mg30~64歳:男性370mg、女性290mg65~74歳:男性350mg、女性280mg参照:日本人の食事摂取基準(2020 年版)しかし、以下の理由で現代の日本人はマグネシウムが不足気味です。日本食を食べる機会の減少加工食品やファストフードの増加慢性的なストレス日本食を食べる機会の減少日本人がマグネシウム不足になっている理由の1つは、食生活の変化です。砂糖や油脂、肉が多いメニューが増えた結果、魚や海藻、味噌といったマグネシウムを摂れる日本食を食べる機会が減っていると言えます。また、戦前はマグネシウムを多く含む大麦や雑穀といった穀物が良く食べられていました。しかし、現代では白米を主食とするようになり、パンや小麦製品も増えました。マグネシウムは、玄米や全粒小麦から精製されて白米や小麦になる過程で取り除かれてしまいます。戦後、食事の欧米化が進み、以前よりマグネシウムの摂取量が少なくなっていると考えられています。加工食品やファストフードの増加塩分の取りすぎは、マグネシウム不足を引き起こす可能性があります。塩分、つまりナトリウムを摂りすぎると体は体外に排出しようと働き、排出の過程でマグネシウムも一緒に排出されることがあるためです。塩分が多い加工食品やファストフードを食べる機会が多いほど、マグネシウム不足の可能性があります。慢性的なストレスストレスもマグネシウム不足になりやすくなります。ストレスがかかるとマグネシウムの尿中排泄量が多くなり、体外へ排出されやすくなります。現代社会はストレス社会と言われるように、仕事や人間関係、不規則な生活習慣で、ストレスを感じている方が多いのではないでしょうか。ストレスが続いている場合は、体内のマグネシウムが不足している状態かもしれません。マグネシウムを摂取する方法マグネシウムを摂取するには、食事による経口摂取がおすすめです。経口摂取以外の方法として、マグネシウム入りの入浴剤やクリームなど、皮膚から浸透させる経皮吸収を狙う商品があります。しかし、皮膚からの吸収効果は研究段階にあります。ここでは、経口摂取の方法について以下の3つを紹介します。食事で摂り入れる硬水を積極的に摂り入れるサプリメントで補う食事で摂り入れるマグネシウムは、以下のように幅広い食品に含まれるため、毎日の食事で食材をバランスよく食べることがポイントです。海藻類:あおさ、あおのり、わかめ魚介類:干しえび、しらす干し穀物:玄米、ライ麦パン、そば野菜類:切り干し大根、ほうれん草豆類:きなこ、油揚げ、豆腐例えば、発芽玄米100g(おにぎり1個分程度)には53g、6枚切りのライ麦パン1枚には40gのマグネシウムが含まれています。参照:「マグネシウムの働きと1日の摂取量」公益財団法人長寿科学振興財団関連記事:夕食はグリシンとマグネシウムを取り入れた献立硬水を積極的に摂り入れる水分補給の際、硬水を積極的に摂るのもおすすめです。硬水は、軟水と比較してマグネシウムとカルシウムが豊富に含まれています。日本の水は、地質学的な特徴などにより多くが軟水です。そのため、軟水に慣れていると硬水は飲みにくく感じるかもしれません。しかし、手軽にマグネシウムを摂り入れられます。軟水か硬水かを分ける基準は、マグネシウムとカルシウムの量を表す「硬度」です。WHO(世界保健機関)の基準によると、180mg/L以上が「非常な硬水」となっています。300mg/L以上の硬水なら、1リットルで女性の1日における推奨摂取量を満たすことになりますので、購入する際は硬度を確認してみてください。サプリメントで補うサプリメントは、効率的にマグネシウムを摂取できます。ただし、過剰に摂取すると下痢を引き起こす可能性があるため注意が必要です。厚生労働省は、食品以外でマグネシウムを摂取する際の上限を1日350mgと定めています。サプリメントを利用する際は、上限量を超えないようにしましょう。参照:日本人の食事摂取基準(2020 年版)睡眠におけるマグネシウムの効果を高めるコツ快眠を目指してマグネシウムを摂取するなら、効果を得るためのコツを知っておきましょう。コツとして以下の3点を紹介します。寝る前に摂取するカルシウムも摂取する日中は太陽光を浴びる寝る前に摂取するサプリメントで摂取する場合は、グリシン酸マグネシウムやクエン酸マグネシウムを就寝の30分前に摂るのが良いとされています。便秘薬に用いられる酸化マグネシウムは、便をやわらかくする作用があるものの、睡眠の質の改善においては効果を得られない可能性があります。マグネシウムの種類も確認しましょう。参照:Does Magnesium Help You Sleep?-Cleveland Clinicカルシウムも摂取するマグネシウムとカルシウムは、片方が増えるともう片方が減る関係にあり、バランスを保つことで筋肉を収縮させたり血管を拡張させたりしています。そのため、マグネシウムとともにカルシウムを多く含む食材も一緒に摂りましょう。カルシウムは以下のような食材に多く含まれています。乳製品:牛乳やヨーグルト小魚:ちりめんじゃこやイワシ理想は、体内におけるマグネシウムとカルシウムの存在割合が1:2になることです。日中は太陽光を浴びるビタミンDには、マグネシウムの吸収をサポートする作用があります。太陽光を浴びることで作られるビタミンのため、日中は外に出て陽を浴びると良いでしょう。また、先ほど睡眠ホルモンとして紹介したメラトニンの分泌を促すためにも、日光浴をおすすめします。メラトニンは、昼間に光を浴びることで夜の分泌量が増えるためです。太陽光を浴びると、マグネシウムの吸収率を高めるだけでなく、睡眠の質を高める効果が期待できます。関連記事:生活習慣の見直しで睡眠改善安眠のためにマグネシウムの摂取がおすすめ満足な睡眠を得るには、生活習慣や睡眠環境を整えることは大切です。しかし、バランスの良い食生活や適度な運動を心がけ、寝室を快適な温度・湿度に整えても、効果を感じられない場合はマグネシウムの摂取を意識してみてください。生活スタイルを大きく変化させる必要なく、睡眠の質の改善を目指せます。マグネシウムを含む食材は多いため、幅広い食材を食べるように心がけましょう。飲み水を硬水に変えるのもおすすめです。