柳沢正史教授監修・自宅で取り組める睡眠改善サービス「SOMNO+」はこちら米軍採用の睡眠導入法米軍採用の睡眠導入法は、オリンピックのスプリントコーチであるバド・ウィンター(Bud Winter)氏の著書「Relax and Win: Championship Performance」で紹介されています。米軍の軍人は、ひどい騒音でストレスがかかる危険な状況下で最適な休息を取る必要があり、即座に眠りにつくテクニックとして使用されたとされています。やり方を確認。ステップは6つ具体的な方法は以下のとおりです。顔の筋肉をリラックスさせる肩を落とし、腕、手と、片側ずつリラックスさせる胸、腹部へと意識を移しリラックスさせる太もも、足、つま先、と脚を片側ずつリラックスさせる考えず心を無にする以下のような方法で心を落ち着かせる・青空の下、穏やかな湖畔でカヌーの上に横たわっていることをイメージする・暗い部屋でベルベッドのハンモックに横たわっていることをイメージする・「考えるな、考えるな、考えるな」と10秒繰り返す息を吐くことと吸うことに集中し深く呼吸しながら、各ステップを意識してゆっくりと行います。 短期間で習得・成功するためのコツ睡眠導入のステップを音声で誘導してくれる動画やアプリを使うと、スムーズに実践できます。睡眠導入の流れを考えながら、あるいはテキストを読みながら実践すると、頭が冴えてしまう可能性があります。間違えずに行うことに意識が向いてしまうと、リラックスできません。例えば、瞑想においてもガイドに沿って行う誘導瞑想があるように、導きがあると目的に沿って進めやすくなります。「次にすべきこと」を与えてもらえるため、「やり方は合っているのか」など余計な考えが浮かばなくなり、集中できます。また、人は1日に数万回も思考していると言われているように、思考を止めることは簡単ではありません。一度で成功しなくても落ち込む必要はなく、何度も練習し慣れるまで繰り返し実践することがポイントです。ほかにもある眠れない時におすすめの睡眠法SNSで話題の「アリス式睡眠法」アリス式睡眠法は投稿者オリジナルの方法で、「よく眠れた」「眠れるのでおすすめ」といったコメントが寄せられ、話題になっています。布団に座りゆっくり呼吸する何も考えず脳内に浮かんできた映像を見続ける半分寝ているような状態になったら横になる上記の流れをもう一度行うこととされていますが、慣れてくると一度でも眠れるようになる可能性があります。アリス式睡眠法で大切なのは何も考えないこととされています。思考活動を抑える「認知シャッフル睡眠法」「認知シャッフル睡眠法」は、カナダの認知科学者リュック・ボードウィン(Luc P. Beaudoin)博士が考案した睡眠法です。2016年に論文が発表されて以来、複数のメディアで紹介されています。簡単な単語を1つ思い浮かべる1で思い浮かべた単語の1文字目から始まる単語を思い浮かべてイメージする(単語が出てこなくなったら)2文字目から始まる単語を思い浮かべてイメージする例えば最初の単語として「すいみんほう」を思い浮かべたら、1文字目の「す」から始まる単語、「するめ」「すいとう」などを思い浮かべてイメージします。「す」から始まる単語が思い浮かばなくなったら2文字目に移り、3文字目、4文字目と続けます。脈絡のない単語を思い浮かべ、眠りを妨げる思考や感情を取り払うことが目的です。日本でも知名度が高く、思い浮かべる単語を読み上げて入眠をサポートする動画やアプリもあります。ただし、毎回単語や順番が同じだと効果が低くなるとされているため、動画やアプリを使う際は、複数のコンテンツを取り揃えておくと良いでしょう。参照:日本語での認知シャッフル睡眠法を用いた入眠支援システムの提案「A design-based approach to sleep-onset and insomnia: Super-somnolent mentation, the cognitive shuffle and serial diverse imagining」Luc P. Beaudoin呼吸に集中する「4-7-8呼吸法」「4-7-8呼吸法」は、アリゾナ大学のアンドリュー・ワイル(Andrew Weil)博士が開発した呼吸法で、ヨガの呼吸方法に基づいています。背筋を伸ばして座り、舌の先端を上の前歯の後ろに当てた状態で行います。フーと音を立てて口から完全に息を吐く口を閉じ鼻から息を吸って4つ数える息を止めて7つ数える8つ数えながらフーッと音を立てて口から息を吐く息を吐いたら2に戻って3回繰り返し、合計4回呼吸します。息を吸う時は常に鼻から、吐く時は常に口から吐き出し、吸う時の2倍の時間をかけて行います。重要なのは4:7:8の比率です。ゆっくりとした深い呼吸ができるようになるまで、息を止めるのが苦しい場合はスピードを上げてもかまわないとされています。参照:Weil Lifestyle睡眠法の共通点米軍が採用する睡眠導入法を含めた4つの睡眠法において、リラックスして何も考えないことを目指す点が共通しています。眠る時に興奮状態にあったりストレスを抱えていたりすると、心拍数が多くなり寝つきにくくなります。途中で起きてしまう可能性も高くなり睡眠が安定しません。気持ちが落ち着いて穏やかだとスムーズに眠れるため、眠りにつくためのポイントは、脳や体をリラックスさせることと言えるでしょう。睡眠は生きていく上で必要不可欠な生命活動です。日中活動するためのエネルギーを保存するために、体だけでなく脳の活動も休めることが大切です。参照:良質な睡眠のための環境づくりー就寝前のリラクゼーションと光の活用ー比較して分かった米軍採用の睡眠導入法の特徴効果が示されているバド・ウィンター氏の著書「Relax and Win: Championship Performance」によると、米国軍人が6週間試したところ、96%が120秒以内に眠れるようになったと紹介されています。習得するのに必要な期間、眠りにつくまでの時間、寝つけるようになった人の割合について結果が示されており、信頼性の高い睡眠法です。米軍採用の睡眠導入法以外の睡眠法においては、具体的な研究結果は示されていません。手順が多く習得に時間がかかる米軍採用の睡眠導入法は6ステップですが、ほかの睡眠法は3〜4ステップです。ほかと比較すると手順が多く、複雑に感じられます。流れを頭に入れるのに苦労するかもしれませんが、効果を得られた人の割合が96%という結果からすると、習得できると寝つきの悪さから解放されることが期待できます。米軍採用の睡眠導入法をより効果的にするために睡眠導入法を成功させるためには、睡眠の質が重要です。睡眠の質を高めるためにポイントを押さえておきましょう。日光を浴びて体内時計をリセットする昼間に日光を浴びることで、体内時計が24時間に調節されます。人間を含む全ての生物には、朝目が覚めて日中活動し夜になると眠くなるという「体内時計」が備わっています。しかし、体内時計の周期は24時間より長いため、調節して早めなければ、生活時間がずれてしまいます。体内時計の調整に関わっているのが「メラトニン」と「セロトニン」です。2つのホルモンの分泌量を増やすには、光を浴びることが効果的です。日光を浴びることで体内時計がリセットされ、日中は起きて活動し、夜は眠くなるという体のリズムが整います。参照:「快眠と生活習慣」厚生省e-ヘルスネット就寝2〜3時間前までに入浴して体を温める就寝2〜3時間前に入浴し、体を温めて寝床に入ると眠りにつきやすくなります。体温には臓器の温度である「深部体温」と皮膚表面の体温である「皮膚体温」があり、深部体温が下がると眠りやすくなります。深部体温は皮膚温度を高くして放熱させると下がるため、入浴で体を温めると、放熱が促され寝つきやすくなります。参照:「快眠と生活習慣」厚生省e-ヘルスネット 「眼の周りを温めることによる入眠への影響」花王睡眠環境を整える光や音、温度や湿度といった睡眠環境を整えることも快眠には必要です。体内時計を調節するために、昼間は日に当たることをおすすめしましたが、夜間は光を過剰に浴びると睡眠サイクルが乱れやすくなります。夕方以降の照明は明るさを控えめにすると良いでしょう。また、明るい室内で眠ると夜中に目覚めやすくなりますので、寝室はできるだけ暗くするほうが好ましいです。室内照明は、状況によって明るさを調節できるタイプがおすすめです。温度や湿度も、エアコンや寝具で調整しましょう。睡眠のためには、室温は20℃前後、湿度は40〜70%程度、敷布団と掛け布団の間である「寝床内環境」は、温度が33±1℃、湿度は50±5%が最適とされています。参照:「快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの 関係」厚生省e-ヘルスネット 健康づくりのための睡眠ガイド 2023 睡眠法以外の方法も活用する「筋弛緩法」で体をリラックスさせる「筋弛緩法」は、アメリカのエドモンド・ジェイコブソン(Edmund Jacobson)博士によって開発されました。正式には「漸進的筋弛緩法」と言われます。手を握ってゆっくり広げる、首をすぼめるように肩をグッと上げてストンと落とす、お腹に力を入れてへこませストンと力を抜く、といったように、各パーツの筋肉に力を入れて意識的に緊張させ、その後力を抜いて緩めることを繰り返します。不安や緊張がある時に行うと、体の力が抜けてリラックスできるでしょう。眠気を誘う「ツボ」を押すツボを刺激すると、体の気の流れがスムーズになることで体調が整うとされています。眠れない時は、痛気持ちいい刺激で不眠に効くツボを押してみるのも良いでしょう。全身にはWHO(世界保健機関)により認定された361箇所のツボがあります。不眠に良いとされるツボをいくつか紹介します。手のひらの中心にある「労宮(ろうきゅう)」かかとの中央にある「失眠(しつみん)」おへその下3~5cmあたりにある「丹田(たんでん)」頭の頂点にある「百会(ひゃくえ)」米軍採用の睡眠導入法の効果がない時の見直しポイント寝る前のアルコールや夕食後のカフェイン摂取就寝前のアルコールは寝つきが良くなるかもしれません。しかし、海外の研究では、アルコール摂取により中途覚醒や早朝に目を覚ましてしまう早朝覚醒が増えて眠りが浅くなり、睡眠障害が発生しやすいと示されています。寝酒を続けるとアルコールへの耐性ができ、飲酒量が増える可能性があるためおすすめできません。また、カフェインには覚醒作用があるため、快眠のためには夕食後にコーヒーなどを飲むことは控えましょう。寝酒(ナイトキャップ)や夕食後にカフェインを摂る習慣は改めましょう。参照:Alcohol and sleep I: effects on normal sleep就寝前のスマートフォン操作やパソコン作業眠る直前までブルーライトを浴びると、寝つきが悪くなり睡眠の質も悪化します。スマートフォンやパソコンの画面に使われているLEDからは、体内時計に影響を与えるブルーライトが多く発せられているため、寝る前にスマートフォンを操作したりパソコンで作業をすることは控えましょう。特に、寝ながらデジタル機器を使うと画面との距離が近距離になり、ブルーライトの影響が大きくなります。デジタル機器は寝室に持ち込まないことをおすすめします。参照:健康づくりのための睡眠ガイド 2023 夕方以降の30分以上の昼寝昼寝の習慣がある方は、昼寝をする時間帯と昼寝時間の見直しが必要かもしれません。仮眠は、午後の眠気を改善させるための効果的な手段として知られています。効果を期待して、昼寝制度を導入している企業もあるほどです。ただし、夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響を及ぼし、長い昼寝は夜の寝つきを悪くします。昼寝は午後3時より前に、20〜30分ほど取るのが効果的です。参照:健康づくりのための睡眠指針検討会報告書 午後の眠気対策としての短時間仮眠睡眠導入法を成功させるために生活や環境の見直しも睡眠の質を高めるには、睡眠導入法の実践とともに、日頃の生活習慣や睡眠環境を見直すことも必要です。睡眠不足は、疲労の蓄積や判断力の低下だけでなく、生活習慣病や免疫力の低下など健康の妨げになりますので、睡眠について悩みや問題がある場合は早めの対処がおすすめです。自分では改善、解消ができない場合は、専門のクリニックを受診することも検討してください。