柳沢正史教授監修・自宅で取り組める睡眠改善サービス「SOMNO+」はこちら適切な睡眠時間ってどのくらい?厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人の睡眠時間は6時間以上が目安です。しかし6時間睡眠が2週間続くと、丸2日徹夜したときと同じくらいの認知機能低下が生じたという調査データがあります。成人の適切な睡眠時間は、7~9時間が一般的です。国内企業のデータで、7~9時間睡眠の人は、総合健康リスクと高ストレス者の割合がもっとも低かったと報告されています。米国の国立睡眠財団のガイドラインにおいても、健康な成人は7~9時間の睡眠が推奨されています。ただし、個人の活動量や睡眠休養感により、適切な睡眠時間は前後することがあるのです。世界から見る日本の睡眠に関する内容については産業医クラウドさんのコラムにも詳しく書いてあるので、ぜひチェックしてみてください。慢性的な睡眠不足が「負債」になる、睡眠負債とは関連記事:コア睡眠とは?理想的な時間と向上させるメリットを解説 長時間睡眠の5つのメリット睡眠時間をしっかり確保することで得られるメリットは5つあります。成長ホルモンの分泌促進睡眠時間をしっかりとっていると、成長ホルモンが分泌されて、身体の疲労回復につながります。成長ホルモンには、ダメージを受けた細胞の修復や代謝調節などの働きがあります。成長ホルモンが多く分泌されるのは、もっとも深い眠りの段階で、睡眠前半の3~4時間ほどです。睡眠時間が短くなると、成長ホルモンの分泌量が減るため注意しましょう。ストレスの緩和心身のストレスをやわらげるのに、睡眠時間を確保することは重要な役割を果たします。十分な睡眠をとると、脳が日中の出来事を整理し、ネガティブな記憶や不要な情報を消去するため、抑うつ症状や情緒不安定になるのを抑えられます。さらに心身を守るホルモンのコルチゾールの分泌が安定し、ストレスが発生しても対処できるようになるのです。免疫力アップ睡眠時間を十分にとると、免疫力アップにつながります。海外の調査で、睡眠時間が短い人や睡眠効率の低い人ほど風邪を引きやすいという報告がありました。ほかにも睡眠不足になると、免疫細胞の働きが低下するという調査データもあります。関連記事:睡眠と免疫力の関係性記憶力・集中力向上睡眠で十分な休養をとると、次の日の記憶力や集中力が向上します。睡眠不足になると、脳が情報を整理することができず、その日に得られた体験や知識の定着が難しくなります。また睡眠時間が短くなると、脳の老廃物が排出されず機能が低下するため、集中力低下につながるのです。生活習慣病の予防7~9時間の睡眠を確保できると、生活習慣病の予防につながります。睡眠時間が短いと、肥満・糖尿病・循環器疾患などの生活習慣病の発症リスクが上昇することが分かっています。6時間未満の睡眠では、全死亡リスクが上昇したという調査報告もあります。寝すぎによる3つのデメリット必要以上に長い睡眠をとると、かえって体調不良を起こすことが知られています。寝すぎといわれるのは、9~10時間以上が目安です。寝すぎによる心身への悪影響は3つあります。体重の増加9~10時間以上の睡眠をとっている人は、平均的な睡眠時間の人と比べて、体重が5kg以上増加する確率が高いという調査報告がありました。韓国で行われた調査で、睡眠時間が10時間以上の人ではメタボリックシンドロームのリスクが上昇し、さらに女性においては腹囲が増加することが示されています。認知機能の低下70歳以上の高齢者において、睡眠時間が9時間以上の人では、平均的な睡眠時間の人より、認知機能が低いという調査報告があります。日本における追跡調査で、10時間以上の睡眠をとる高齢者は、認知症発症率が上昇することが報告されました。心血管疾患の発症リスク増加海外の調査で、9時間以上の睡眠をとっている人は、心血管疾患の死亡リスクが高いことが報告されています。日本でも、10時間以上の睡眠をとる人は7時間睡眠の人と比べて、心血管疾患の死亡率が男性で3.6倍、女性で2.7倍と報告されています。 睡眠の質を高める秘訣適切な睡眠時間のみならず、睡眠の質も重要です。睡眠の質を高めるには、以下の5つに気をつけて過ごしましょう。朝日を浴びる朝日を浴びることで、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を調整できます。朝日を浴びるとメラトニンの分泌は一旦停止し、14~16時間後に再び分泌を開始します。就寝時間に近くなるにつれ分泌量が増えるため、寝つきが良くなるのです。適度な運動を続ける軽く息がはずむ程度の運動を行うと、疲労を回復させるための睡眠欲求が増えるため、入眠がスムーズになり深い睡眠が得られるようになります。深い睡眠を得るための運動はジョギングやウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。就寝1時間前の運動は、脳が興奮して寝つきが悪くなるため、就寝3時間前までに行いましょう。就寝1時間前からスマートフォンの操作をしないスマートフォンの光はエネルギーが強く、寝る前に操作をすると睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が減り、寝つきを悪くします。就寝1時間前からスマートフォンには触れずに、リラックスして眠れる状態を整えていきましょう。就寝前のカフェインやアルコール摂取を控えるカフェインには覚醒作用と利尿作用があるため、寝る前に摂取すると寝つきが悪くなったり睡眠途中で目が覚めたりします。また、就寝前にアルコールを摂取すると、寝つきは良くなりますが浅い睡眠になります。カフェインやアルコールは体内で分解するのに時間がかかるため、就寝の3~4時間前から摂取するのを控えましょう。入浴から1~2時間後に就寝する日中は体温が高く、就寝時間が近づくと深部体温が下がることを活用し、入浴で体温を上げておくと寝つきや睡眠の質が改善します。入浴から1~2時間後に就寝すると効果的です。湯温が熱いと神経が興奮して血圧が上昇するため睡眠の質が下がります。ぬるめの38~40度が効果的です。7~9時間の長時間睡眠はメリットが多い!睡眠の質にも気をつけよう成人の睡眠時間は、7~9時間が推奨されています。国内外の調査において、7~9時間の睡眠をとっている人ほど、さまざまな病気の発症リスクが低いことが示されています。睡眠時間の確保だけではなく、睡眠の質も大切です。睡眠の質が上がると睡眠休養感が高まり、仕事のパフォーマンスも向上します。NTT PARAVITA「ねむりの応援団」では、従業員の睡眠改善へ向けた総合サポートサービスを提供しています。従業員の睡眠衛生に取り組みたいときは、専門のインストラクターによるサービスの利用を検討しましょう。参考資料:「ねむりの応援団」サービス資料参考文献・第 3 部 生活習慣調査の結果(令和元年国民健康・栄養調査報告)・健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)・How Much Sleep Do We Really Need? | Sleep Foundation・「健康リスク」「ストレス過多な人」は “睡眠5時間未満”に集中|株式会社ドクタートラスト プレスリリース2023年11月7日・Cohen S, et al. Arch Intern Med. 2009;169:62-7・Michael Irwin, et al. Psychosom Med. 1994; 56: 493-498.・第1回 「睡眠と記憶について/基本的な睡眠とは」|甲南大学・Kim, C.E.; Shin, S.; Lee, H.W.; Lim, J.; Lee, J.K.; Shin, A.; Kang, D. Association between sleep duration and metabolic syndrome: A cross-sectional study. BMC Public Health 2018, 18, 720.・Ohara T, et al.Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community.J Am Geriatr Soc. 2018 Oct;66(10):1911-1918・Kim et al. Insufficient and excessive amounts of sleep increase the risk of premature death from cardiovascular and other diseases: the Multiethnic Cohort Study. Prev Med. 2013;57:377-85.・睡眠時間と死亡リスクとの関連について | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト・快眠と生活習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)