柳沢正史教授監修・自宅で取り組める睡眠改善サービス「SOMNO+」はこちら関連記事:睡眠に良い栄養素って?食事で睡眠リズムを整えよう睡眠の質が大切な理由睡眠には、日中の活動で溜まった疲労やストレスから回復させる働きがあります。そのため睡眠休養感が得られると、翌日のパフォーマンスや労働生産性の向上につながるのです。質の良い睡眠をとると身体の組織や細胞の修復がきちんと行われるため、全身のホルモン分泌が安定します。睡眠休養感がある人では、うつ病や適応障害などメンタルヘルスの不調を防いだり、肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症予防になったりすることが分かっています。睡眠の質アップに効果的な栄養素と食べ物睡眠の質を上げるには、食べ物から摂取できる栄養素が大切です。睡眠にかかわるホルモンや神経に働きかける3つの栄養素について解説します。それぞれの栄養素を多く含む食材も紹介します。トリプトファンを多く含む食材トリプトファンは、体内で合成できない必須アミノ酸のひとつで、睡眠リズムを調整するホルモンのメラトニンやセロトニンを生成するのに必要な栄養素です。トリプトファンが不足すると、睡眠時間が減少したり、睡眠の質が低下したりすることが分かっています。トリプトファンを多く含む食材には、乳製品・大豆製品・卵・牛肉・豚肉・バナナがあります。GABA(γ-アミノ酪酸)が豊富な食材GABA(γ-アミノ酪酸)はアミノ酸の1種です。交感神経が活発になるのを抑えて、睡眠に入るのを助ける働きがあります。海外の研究で、睡眠トラブルのある人にGABAを摂取してもらったところ、寝つきが良くなり睡眠の質も向上したと報告されています。GABAが豊富な食材は、トマト・なす・かぼちゃ・発酵食品・発芽玄米・カカオです。グリシンが多い食材グリシンはアミノ酸の1種で、深部体温を下げて寝つきをよくする働きがあります。速やかに入眠できることで、グリシンを摂取すると睡眠時間と睡眠の質が改善することが分かっています。グリシンが多い食材は、ホタテ・エビ・カニ・肉類です。 睡眠の質を上げるメニュー作りのコツ睡眠の質を上げる栄養素を含んだ食材は、メニューを工夫して効率よく摂取しましょう。朝食でしっかりトリプトファンを補給トリプトファンは摂取すると、体内で変化しセロトニンを作る材料になります。夜になると、生成したセロトニンがメラトニンに変化するため睡眠を助けます。そのため朝にトリプトファンを十分摂取しましょう。トリプトファンを含む食材と一緒に炭水化物やビタミンB6をとると効果的です。朝食メニューの一例として、和食派はごはん・味噌汁・焼き鮭・納豆など、洋食派はパン・目玉焼き・ヨーグルト・バナナなどがあります。時間がない人は、バナナと牛乳で手軽にトリプトファンをとることができます。夕食はグリシンとマグネシウムを取り入れた献立グリシンは自律神経を整えて睡眠を助けるだけではなく、体内のコラーゲンの材料であり、睡眠中の皮膚や筋肉の修復にも役立ちます。夕食にグリシンをとり、次の日も元気に過ごせるようにしましょう。夕食時にマグネシウムを含む食材(海藻・穀類・豆類など)も取り入れると良いです。マグネシウムは、睡眠の質にかかわるホルモンのメラトニンを生成するのに必要となります。夕食メニューの一例は以下のとおりです。肉のソテーと海藻入りの味噌汁海鮮と豆腐を使った鍋物外食するときもグリシンとマグネシウムに気をつけてメニューを選びましょう。寝る前の飲み物の選び方質の高い睡眠をとるには、寝る前の飲み物にも注意しましょう。寝つきが悪くなるため、就寝直前にカフェイン入りの飲み物をとらないようにしてください。ハーブティー・ホットミルク・酒粕の甘酒がおすすめです。ハーブティーを夕方以降に2回とると、寝つきや睡眠維持について睡眠の質が改善したという研究報告があります。牛乳に含まれるカルシウムには、自律神経の働きを整える働きがあり眠りに入るのを助けるのです。酒粕に含まれるアデノシンは、脳内で睡眠に導く働きがあります。睡眠の質を高めるために食事で気をつけるポイント質の高い睡眠を得られるように、食生活で気をつけたいポイントを3つ紹介します。起床後2時間以内に朝食を食べる人間の体内時計の周期は約25時間です。そのまま何もしないで過ごすと体のリズムが乱れるため、体内時計を調整する必要があります。体内時計のリズムを効率よくリセットできるのは朝です。目覚めたらすぐに朝日を浴びることも大切ですが、朝食をとって体温を上げると内臓が活発に働くようになるため、体内時計を調節できます。効率よく調節するためには、起床後2時間以内に朝食をとるようにしましょう。夕食は就寝3時間前までに済ませる夕食を就寝直前にとると、睡眠中も食べ物の消化を行うため、眠りが浅くなり途中で目が覚める原因につながります。夕食は就寝3時間前までに済ませると良いです。食後3時間ほど経つと、副交感神経が優位になりリラックス状態になるため、眠りに入りやすくなります。カフェイン摂取は就寝4時間前まで寝る前に緑茶・コーヒー・紅茶などカフェインの入った飲み物をとると、脳が覚醒してしまうため睡眠の質が下がります。またカフェインには利尿作用があるため、夜間にトイレで目が覚める原因となるのです。カフェインは体内で効果が弱くなるまでに4時間前後かかるため、夕方以降にカフェイン入りの飲み物は控えるようにしましょう。睡眠の質を上げる食べ物を活用して翌日の生産性をアップさせよう睡眠の質を上げるために、睡眠にかかわるホルモンや自律神経に働きかける栄養が含まれた食べ物を意識的にとると良いです。食事の時間帯や寝る前の飲み物にも気を配りましょう。質の高い睡眠がとれると心身の疲労が回復し、仕事がはかどるようになります。NTT PARAVITA「ねむりの応援団」では、睡眠改善のために生活上のアドバイスやコンテンツ配信を行っています。従業員が睡眠トラブルを抱えているときや、睡眠の質をあげるための食事についてアドバイスを受けたいときは、専門の睡眠改善インストラクターに相談してみましょう。参考資料:「ねむりの応援団」サービス資料参考文献・Effects of a tryptophan-free amino acid drink challenge on normal human sleep electroencephalogram and mood. Bhatti T、 Gillin JC, Seifritz E, et al. Biol Psychiatry. 1998;43:52–59.・脳の栄養~ブドウ糖(砂糖)とトリプトファンを中心として|独立行政法人 農畜産業振興機構・Byun JI, et al.: J Clin Neurol 2018; 14: 291–295.・GABA|栄養成分情報|高光製薬・グリシンの正体|有機合成薬品工業株式会社・アミノ酸“グリシン”(※1)摂取により、入眠時の深部体温を低下させ、睡眠の質・睡眠量が改善されることを発見!−第32回日本睡眠学会にて発表−|味の素株式会社・Yamadera W. et al., Sleep and Biological Rhythms, 5, 126-131 (2007).・What should I eat for a good night’s sleep?- BBC・第5回目 上手に昼間を過ごして,良質の睡眠を手に入れる!|甲南大学・2 スタートダッシュを決める 最高の朝食②|はたらく×らいふ プロジェクト|あんしん財団・4-2 睡眠の質と明日のパフォーマンスにつながる夕食メニュー|はたらく×らいふ プロジェクト|あんしん財団・上馬塲 和夫ほか.ハーブティーのQOL増進効果-睡眠の質に関するパイロットスタディ-.日本補完代替医療学会誌,4(3) 2007.10・【医師解説】眠れない時におすすめの飲み物7選|控えるべき飲み物も紹介|一般社団法人 起立性調節障害改善協会・物井則幸.佐野朋美.清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用.オレオサイエンス.第19巻第7号,(2019),291-297・健康づくりのための睡眠ガイド 2023(厚生労働省)