あらすじ前編では、新入社員の離職状況や離職のメカニズムについてご紹介しております。詳しくご覧になりたい方はこちらから。個人のパフォーマンス不眠症の疑いがある新入社員の半数に何も対処しなかった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。【スライド4】左を見てください。横軸は経過日数で縦軸はミスの回数です。1日徹夜をすると8回ミスがあり、2日、3日と経過に伴ってほぼ直線でミスの回数が示されています。4時間睡眠、6時間睡眠の場合でも同様にミスの回数が多く、8時間睡眠でやっとミスの回数が低い傾向にあることがわかります。また、恐ろしいのは【スライド4】右です。縦軸は経過日数で、横軸は眠気に対する主観です。徹夜の日数が増えると眠気はどんどん強くなっていきます。ただ、4時間睡眠・6時間睡眠の場合、初日は眠気を感じているものの日数の経過とともに眠気に慣れてきてしまっていることが読み取れます。本人が眠くないと思っていても睡眠時間が不足している場合には、ミスが増えたり、集中力が低下してしまうことが2つのグラフから言えるのではないでしょうか。【スライド4】メンタル不調への影響これまではストレスが溜まってメンタル不調に陥り、結果として眠れない状態になると考えられてきました。ここ20年で考え方が変化し、不眠というのは症状ではなくて原因のうちの1つだと考えられるようになってきました。不眠が続くと心身のストレスが相まって、メンタル不調を引き起こすということなんです。睡眠と感情のコントロールこの鮮やかな蛇の写真【スライド5】をご覧ください。気持ち悪い・怖いと思われた方が多いのではないかと思います。ヘビの写真を見て気持ち悪いと感じるのは、脳の扁桃体という部分が関与しています。扁桃体は、恐怖や怒りなどのネガティブな感情を司る原始的な脳の部位です。寝不足の状態では、この扁桃体が過剰に反応します。つまり、ヘビの写真を見たときに「怖い」と感じる強さが、十分に睡眠を取った人と取っていない人では大きく異なるのです。研究によれば、この違いは60%にも及ぶそうです。前頭連合野という脳の前部にある司令塔の役割を果たす部位が、通常は扁桃体をコントロールし、その過剰な反応を抑えています。しかし、寝不足になると前頭連合野の機能が低下し、扁桃体の暴走を制御できなくなります。その結果、ヘビを見ると強い恐怖を感じ、その感情を抑えることが難しくなります。新入社員に当てはめると、睡眠不足であるが故に不安や恐怖を感じなくていいことでも、不安感や恐怖感が強まっている可能性が高いと言うことです。睡眠による脳内ストレスの変化大阪の堺市では中高生の不登校をはじめとした諸課題を、睡眠を通じて改善する「みんいく」という取り組みを行っています。5年間で不登校の人数を半数にまで低減させた実績があります。取り組みを行っている木田哲生先生が、睡眠をしっかり取った場合の小中学生の脳内のストレスの変化をまとめています。今回は、社会人に置き換えて【スライド6】のように、脳内のストレスの変化を整理してみました。人間関係、仕事、持病など、個々が抱える問題は様々です。小中学生では、友人関係や勉強に関する問題が該当します。様々なストレスがある中で、「みんいく」では睡眠に絞ったアプローチをしています。睡眠問題を改善した結果、「漠然とした不安」も減少していく傾向にあることが示されたのです。総じて個々のストレスはあるものの、結果としてストレスが飽和点に達しないために通常の生活を送れるということです。社会人においても同様に、睡眠問題を解消することで、「漠然とした不安」が減少し高ストレスになりにくいと考えられます。睡眠とストレスチェックの関係睡眠不足が感情に及ぼす影響についてのデータを裏付ける結果があります。年に一度のストレスチェックで「よく眠れていますか」という質問が含まれています。これに対して、4段階(「ほとんどいつも眠れていない」〜「よく眠れている」)で回答します。ストレスチェックには、「元気いっぱいだ」「生き生きする」「怒りを感じる」「内心腹立たしい」といった心身のストレスに関する質問もあります。これらの質問は4点満点で評価され、4点が最も悪い状態を示します。【スライド7】のデータから、睡眠が不足している人は、心身のストレス項目で高いスコアを示すことが判明しました。具体的には、ほとんどいつも眠れていない人の平均スコアは最も高く、しばしば眠れていない人、時々眠れていない人、大丈夫な人の順に低くなっています。これは、眠れていない人ほど怒りや漠然とした不安を強く感じることを示しています。睡眠の質が低いほど、ネガティブな感情やストレスを強く感じるという明確な相関が見られました。高ストレス者に対する睡眠改善結果弊社で睡眠改善を行った結果です【スライド8】。横軸は睡眠の状態を示しており、0点が最も良い状態を意味します。縦軸は心身のストレス点数(憂鬱や不安など)を示し、0点が最も良い状態です。私たちは睡眠の質が悪いグレーの人たちに介入し、睡眠改善を図りました。その結果、これらの人々はオレンジ(睡眠が改善された状態)になりました。具体的には、アテネ不眠尺度が平均で3〜6.5ポイント左側に改善しました。それに伴い、心身のストレスも改善しました。睡眠の質が悪い人々は、さまざまな不安を抱えており、ストレスチェックの点数が高い人々ほど漠然とした不安が大きいことが分かります。私たちは、人間関係や病気などの個別のストレス要因に対して特に介入はせず、シンプルに睡眠改善だけを行いました。その結果、漠然とした不安が小さくなりました。右側のデータを見ていただくと、悲しみやイライラ、仕事への集中力低下といった不安が、睡眠の改善によって軽減されたことがわかります。このデータは、睡眠改善がストレス軽減に効果的であることを示しています。睡眠とチームワーク最近の研究から、睡眠が悪くなると疾病リスクが上昇したり、個人のパフォーマンスが低下することが分かっています。その他にも、忍耐力が欠如したり、攻撃的になりやすかったり、共感力が欠如するといったことも分かってきています。睡眠が乱れた新入社員をそのままにしておくことはチームワークに対しても極めてマイナスです。睡眠改善方法について弊社では新入社員の生活リズムを整えて、定着させるためのプログラムをご提供しています。睡眠について学習する機会は少ないと思います。睡眠のメカニズムを理解して、何が正しくて何が悪いのか、自分の睡眠状況をしっかり把握し改善していくことが大切です。睡眠改善プログラムでは、ご自宅に睡眠センターを配送させていただきます。睡眠センサーを設置いただくことで、日々の睡眠を計測できます。計測された睡眠データを元に専任のスタッフが1on1で睡眠のアドバイスをいたします。まとめ睡眠を改善することで、日々の高ストレス状態を緩和できます。また、十分な睡眠を取ることで、ストレスと戦うことができます。新入社員への支援は、単なる福利厚生の一環ではなく、離職対策にも大きく寄与する重要な取り組みではないでしょうか。