はじめに《以下の内容はNTT PARAVITA(槇林)の講話を要約したものとなります》新入社員の定着・離職防止は、多くの企業にとって重要な課題です。色々な対策があるかと思いますが、その中の一例としてお聞きいただければと思います。ゴールデンウィーク明けに新入社員が退職しやすいといったお悩みを抱える企業のご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。ちょうどこの時期に、新入社員に限らず、様々な理由から仕事を辞めたいと考えている人が潜在的にも健在的にも出てきます。パーソルキャリアの調査によると、退職理由として「給与が低い・昇給の見込みがない」「人間関係が悪く・うまくいかない」「社員を育成する環境がない」「他にやりたい仕事がある」などが挙げられています。これらの理由の中には対策が取りにくいものもありますが、今回はすぐに実行でき、さまざまな面で効果がある方法をご紹介したいと思っています。新入社員の離職状況厚生労働省の調査によると、新入社員の離職率は、1年以内が12%、2年以内が24.5%、そして3年以内が32.3%に達することが分かりました。毎年約10%の割合で新入社員が退職していることになります。苦労して採用した担当者からみると、一人も辞めてほしくないという気持ちがあると思います。【スライド1】の左側は、「人事担当者から見て新入社員の精神状態が不安定になる時期は何月なのか」を質問をした結果です。ほとんどの回答で5月または6月と回答されています。【スライド1】の右側は、新入社員が不安定になる状況についての回答を示しています。「会社に来なくなる」「周囲とコミュニケーションが取れなくなる」といった状況のほか、「イライラして怒りっぽくなる」「集中力がなくなる」「睡眠不足による不調」など、様々な理由が挙げられています。【スライド1】離職における経営上の課題経営上の課題を4つ挙げさせていただきます。1つは直接的なコストです。採用プロセスにかかる部分では、面接の実施や、採用担当者の人件費や広告費用などがかかっています。さらに、新入社員研修やOJTといった研修・教育にかかるコストもあるかと思います。2つ目は生産性の低下です。早期離職により、業務が一時的に停滞し、チーム全体のパフォーマンスが低下することがあります。担当者が急に辞めることで、他の従業員へ仕事の皺寄せがきてしまうことやプロジェクトの遅延により納期に影響を与える可能性もあります。3つ目は組織文化の混乱です。新入社員の方が入社すると職場の雰囲気も華やぐことや活性化につながります。しかし、早期離職が頻発すると、職場環境に何か問題があるのではないかという不安感が広がり、残る社員のストレスが増大します。4つ目はブランドイメージの悪化です。「あの会社に入ってもすぐに新入社員が辞めてしまう」というような風評被害が出てしまい、会社のブランドイメージを毀損してしまうということです。経営観点で見ても、新入社員がしっかりと定着していくことは極めて重要なことだと考えられます。新入社員の考える入社前後のギャップラーニングイノベーション研究所によると、約50%の参加者が「入社前後で会社や仕事についてのギャップを感じたか」という質問に対し、「難しい」と回答しています。今日はこの50%という数字が非常に重要になってくるので頭に入れておいていただければと思います。社会人としての基本的なマナーや仕事の量・難易度、上司とのコミュニケーションやサポートについては、新入社員の議論の中でよく扱われるテーマですが、我々は生活習慣も重要なの1つだと考えています。皆さん、学生時代を思い出してください。僕は、どちらかというと学生時代に昼夜逆転した生活を送っていました。国立神経医療研究センターの調査によると、大学生の約60%が夜型でした。また、文部科学省の調査では40%、大学生健康管理支援センターの調査では45%が「生活リズムが乱れている」と回答しています。なので、先ほどお話しした50%、半分くらいの人が学生時代に昼夜逆転した生活によって生活リズムが崩れてしまったということが類推されます。新入社員で例えると、ある会社に就職が決まり、学生時代の昼夜逆転生活がすぐに正常に戻せるかと言えば、実際にはなかなか難しいのではないかと思います。社会人になっても乱れた生活を戻せない人々が半数いるのではないかと推測しています。裏付けているデータになります【スライド2】。今年の4月に入社した290人ほどの睡眠状況を弊社で集計しました。アテネ不眠尺度と言われる不眠症の度合いを測る質問に回答してもらっています。6点以上で不眠症の疑いがあると言われているのですが290 名のうち、約半数が該当しています。昼夜逆転している学生の割合も約50%なので、さほどズレはないかと思っております。社会人になると昼夜逆転している生活から、一変して朝に起床し、会社に行くという生活にいきなり変化する訳です。なかなかついていけないが故、睡眠状態が悪くなるという流れが容易に想像つくということです。また、【スライド2】の右をご覧ください。私共が関わった企業様における睡眠状況のデータを年代別に集計しています。20代で見ると、不眠症が疑われる人が約60%います。新卒で入社して、働いているうちに睡眠がよくなっていくのかというとあまり変わらずに、悪い状態を年齢を重ねても維持しているということが読み取れます。いずれにしても20代の睡眠は乱れがちであるということが言えるのではないでしょうか。シンプルに学生時代に乱れていた生活リズムを戻すことはなかなか難しいと考えています。【スライド2】新入社員が離職してしまうメカニズム【スライド3】左(会社のフォロー)をご覧ください。新しい仕事については、新入社員向けの研修等を実施しているかと思います。新しい人間関係については、上司との人間関係については、チューターが配置される等のフォロー体制が構築されていたりするのではないでしょうか。ただ、新しい知識やスキルを日々吸収している中で、これまで会ったこともない人達と新しい人間関係を築いていくことになりますよね。これだけでも人はストレスを感じてしまうと思います。そして、新しい生活リズムについてですね。乱れた生活リズムを送っていた学生が約半数いる中で、「社会人になったんだから生活リズムを直して当然だ」といったメッセージを発信する人はいると思います。ただ実際に困っている新入社員に対して会社としてフォローできているかというと、なかなか難しく個人任せになっているのが現状じゃないかなと思います。仕事や人間関係だけではなく、当然生活リズムが悪い場合も、ストレスに繋がっていきます。ある出来事が起きた時に、それをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかは、個人のストレスレベルによって変わってきます。例えば、新しい業務を教えてくれる上司がちょっとイラっとした顔をした時、その表情をどう解釈するかは次のように異なります。ポジティブに捉える場合は、この上司の表情は期待の現れと見ることができます。上司が少し苛立つのは、あなたにもっと早く成長してほしいからだと考えられるでしょう。一方で、ネガティブに捉える場合は、上司の苛立ちを自分の能力不足や失敗の証拠として受け止めてしまうかもしれません。このような解釈は自信を失わせ、ストレスを増大させる原因となります。このように同じ出来事でも、精神状態によっても捉え方が変わってくるのではないかと思います。ストレスが溜まっていき、ネガティブに捉えがちになってしまい、結果として心身に不調をきたして、最終的に離職してしまうという流れに陥ってしまうということがよくないパターンなのかなと思っています。今日は個人任せになっている、この新しい生活リズムについてお話ししたいと思います。【スライド3】▶︎後編はこちらから。