職業性ストレス簡易調査票とは?「職業性ストレス簡易調査票」とは、厚生労働省が提供している職場で簡単に使用できる自己記入式のストレス調査票のことです。職業性ストレス簡易調査票には57個のチェック項目があり、「仕事のストレス要因」「ストレス反応」「修飾要因(周囲からのサポート)」の3つの領域で構成されています。厚生労働省のストレスチェック調査票は4種類あり、「職業性ストレス簡易調査票の簡略版(23項目)」「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」「新職業性ストレス簡易調査票の短縮版(80項目)」「新職業性ストレス簡易調査票(120項目)」です。判定方法は、個人のストレス評価の場合「簡易判定法」と「標準化得点を用いた方法」の2種類があります。簡易判定法は、選択した回答を点数化し、合計点数でストレスの度合を評価する方法です。点数が高いほど、ストレス値が高いと判断されます。標準化得点を用いた方法は、厚生労働省が作成した素点換算表を用いて、尺度に該当する項目の点数を計算し、その点数を5段階に換算して評価する方法です。簡易判定法に比べると計算方法が複雑ですが、質問数の影響がなく、尺度ごとの評価を考慮したストレス状況が調査できます。こちらは簡易判定法とは逆で、評価点が低いほどストレス値が高いと判断されます。素点換算表について詳しく知りたい方▶︎厚生労働省ホームページ 数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法職業性ストレス簡易調査票の項目数の種類と選び方職業性ストレス簡易調査票4種類の特徴やメリット・デメリットを踏まえ、どれを選択すれば良いか見極めていきましょう。職業性ストレス簡易調査票の簡略版(23項目)〈特徴〉57項目の内23項目を抜粋した調査票。「職場の雰囲気」や「作業環境」などの質問が含まれないのが特徴です。〈メリット〉設問数が少ないため数分程度の短時間で回答が可能です。忙しい従業員でもさっと対応でき、受検率の向上が期待できます。〈デメリット〉従業員自身と職場環境を把握するためには不十分な場合があります。回答しやすい一方で、職場環境の把握がしづらいため、ストレスチェックが義務化されていない50名未満の事業所で、試験的に導入するなどの使い方がおすすめです。職業性ストレス簡易調査票(57項目)〈特徴〉心理的または身体的なストレス反応や仕事上のストレス要因など、多軸的に調査が可能で、あらゆる業種の職場で使用できるように作成されています。〈メリット〉5~10分程度という短時間で回答でき、受検率の向上も期待できる設問量といえます。57項目は、標準的なストレス状況の調査として推奨されている調査票で、厚生労働省の公式サイト(https://stresscheck.mhlw.go.jp/material.html)よりダウンロードが可能です。無料で使用できるため、費用を抑えてストレスチェックが実施できます。〈デメリット〉職場環境の改善につなげるには不十分なところも。厚生労働省が標準的に推奨しているこちらの57項目。幅広い調査が可能ですが、職場環境の改善につなげたいのであれば、必要な項目を自社ごとに検討し追加するのがおすすめです。新職業性ストレス簡易調査票の短縮版(80項目)〈特徴〉57項目の内容に「ワーク・エンゲイジメント」「職場のソーシャルキャピタル(職場の人々との信頼関係)」「ハラスメント」を追加しているのが特徴です。〈メリット〉従業員の健康の保持・増進に加えて、ワーク・エンゲイジメントや職場のソーシャルキャピタルといった、仕事に対するやりがいや上司のマネジメントまで調査できます。〈デメリット〉項目数が多く回答に時間がかかるためストレスチェック離脱の可能性が高まります。57項目の調査票よりも職場環境の改善につながる項目が増えたため、80項目版を選ぶ企業は増えてきています。設問数が80項目と少し多いので、自社にとって不要な項目は削除し、従業員の負担を軽くする工夫をするのもひとつの手でしょう。新職業性ストレス簡易調査票(120項目)〈特徴〉80項目版の内容をより詳しく質問しているのが120項目。上司のマネジメントや自身の適正・成長に関する質問が80項目より増えています。〈メリット〉ストレス状況に加えて、より生き生きとした職場づくりに近づける調査内容になっています。設問が多い分、集団分析の精度が高くなるというメリットも。〈デメリット〉さらに設問数が多くなり、従業員がすべて回答するのに時間がかかり、ストレスチェック離脱の可能性が高まります。従業員のストレス環境とストレス状態、上司のマネジメント、ワーク・エンゲイジメントなど詳しく知り、分析したいなら120項目が適しているでしょう。集団分析の精度も期待できる設問内容なので、従業員が多い企業におすすめです。設問数が多いため、自社目線で取捨選択を行うと従業員の負担を軽減できます。ストレスチェック項目を追加する際の注意点紹介したストレス簡易調査票は、すべてそのまま使用する必要はなく、企業ごとに項目を増やしたり減らしたりができます。ただし、含めるべき領域と含めるべきではない項目があることを覚えておいてください。ストレスチェックに含めるべき領域ストレスチェックには、「仕事のストレス要因」「ストレス反応」「修飾要因(周囲からのサポート)」の3つの領域を含める必要があります。以下、それぞれの領域の例です仕事のストレス要因:仕事の負担、精神的負担、対人関係、働きがい などストレス反応:活気、イライラ感、疲労感、不安感 など修飾要因:上司からのサポート、同僚からのサポート、家族・友人からのサポートまた、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」には“選定する項目に一定の科学的な根拠”が求められると明記されています。これらが含められていれば、ストレスチェック項目の追加が可能です。ストレスチェックに含めるべきではない項目ストレスチェックに関係のない質問は追加することができません。例えば、性格検査や適性検査、精神疾患のスクリーニングなどです。これらはストレスチェックの目的にはつながらず、またフォロー体制も不十分な状態で含めるべき項目ではないでしょう。まとめ職業性ストレスチェック簡易調査票は、23項目、57項目、80項目、120項目の4種類あり、従業員のストレス状況からワーク・エンゲイジメント、職場のソーシャルキャピタルまで、項目数によって調査できる範囲が異なります。項目数が少なすぎると調査が不十分になり、逆に多すぎると従業員が負担に感じ、ストレスチェックから離脱する可能性も考えられます。自社に必要な項目を取捨選択または精査して追加することで、オリジナルのストレスチェック調査票を作ることも可能です。関連記事:ストレスチェック導入のポイントと目的別サービスの選び方